未来の価値 第39話


「説得は失敗に終わったようだね」
「今回は駄目でしたが、僕は諦めません。必ずルルーシュの騎士になります」

あれだけはっきりと拒絶されたにも関わらず、スザクは平然と答えた。折れないその姿は頼もしく思うが、どうやらスザクは思た以上に頑固者らしい。きっとこのぐらいの人物でなければルルーシュの友人にはなれないのだろうなと、クロヴィスは改めてスザクと言う人物をいい意味でも悪い意味でも見直した。

「私は全面的に協力させてもらうが・・・まさかシュナイゼル兄上が君に打診してくるとは思わなかったよ」

昼を過ぎた頃の話だ。ジェレミアを介しているとはいえ、突然のスザクの訪問に驚き、シュナイゼルから出たという専任騎士の話にさらに驚ろかされた。だが、シュナイゼルもその考えならば、後はルルーシュだけだ。そのルルーシュが最難関だが。
その難関さえ超えれば、ルルーシュが心の底から信頼している人物を、ようやく正式な護衛として傍に着けることが出来る。今のように策を練り、不在に気づかれない状態にして一人政庁を抜け出すという危険な事はしなくなるはずだ。・・・周りに隠れて、というのは変わらなくても、スザクを連れていくようになる。
名誉ブリタニア人で学歴に難がある以外、スザクは騎士として問題のない人物だ。血筋で言うならば、元々は名家の、しかも元首相の嫡子。運動能力、騎乗能力共に並み以上、恐らくラウンズにも匹敵するだろう数値を叩きだしている。人当たりもよく、穏やかな気質で、それでいて時には恐れることなく主を諌める。
やり過ぎな面もあるが、やはりルルーシュ相手ならこのぐらいでなければ駄目なのだろう。そう考えれば、スザクほどルルーシュの騎士に適した人材はいない。
とはいえ、少し急ぎ過ぎてしまったか。
名誉ブリタニア人、イレブン共に目の敵としていたあのジェレミアに「恐れながら・・・」とスザクをルルーシュの正式な護衛、いや、騎士にという話を聞かされ、成程それは名案だとルルーシュに言ったが拒絶され、シュナイゼルにそれとなく進言した所、ルルーシュとの繋がりを欲していたシュナイゼルは、すぐにスザクと連絡をとり、そしてスザクはルルーシュの上司であるクロヴィスに一度話を持ちかけた上でルルーシュへ。
1日で一気に話が進んだのだ。ルルーシュがスザクに「一生のことなのに時間をかけて考えていない」と言うのも当然だろう。
急ぎ過ぎたが、流れはいい。
騎士就任は早ければ早いほどいいのだから、後はスザクに頑張ってもらうほかない。これは横からとやかく言う事ではなく、主と騎士二人の問題だから。

「大丈夫です、殿下。ルルーシュはいくら渋っても最終的には折れてくれますから」

自信満々の笑顔で言われた言葉に「そうなのかい?」と思わず返してしまう。

「はい、少し時間はかかるかもしれませんが、必ず頷かせます」

迷いなど欠片も無い。これは決定事項だから。
スザクの言葉からはそう感じられ、とても心強く見えた。

「ならば全て任せよう。私たちの協力が必要なら、いつでも言う様に。ジェレミアもわかっているね」
「イエス・ユアハイネス」

そもそも、話の発端はジェレミアから始まった事。
お任せくださいと、ジェレミアは頭を下げた。


「・・・という話になってるんだよ」
「まあ、スザクさんがお兄様の騎士にですか?素敵です!」

翌日、特に軍務がなかったことから学園に来ていたスザクは、放課後の生徒会室で生徒会役員とナナリーを交えて専任騎士の話が来ている事を伝えると、ナナリーは我が事のように喜んだ。

「スザクさん、絶対にお兄様を頷かせてくださいね。スザクさんが騎士になってくれれば、これほど心強い事はありません」

その表情は心底安堵しており、ナナリーのためにも絶対にルルーシュを頷かせて見せるとスザクは意気込んだ。

「ほんっとにがんばってよねスザク君!ルルちゃん頑固なんだからね」
「あいつ、どうせ気が付いたら無理してるんだろ?騎士になったらその辺ちゃんと見張ってさ、ちゃんと休ませてやれよ?」
「うんうん、スザク君だけが頼りなの。ルルの事、ちゃんと見てあげてね」

ミレイとリヴァル、シャーリーもとても嬉しそうに言った。
スザクがルルーシュの正式な騎士になれば、今以上にルルーシュの周りは安全になるし、ゆっくり休めるようにもなるだろう。そのための協力なら惜しまないという彼らの優しさに、スザクは心の底からの笑みを浮かべ、任せてと頷いた。
この部屋には後二人いて、ニーナは何やら雑誌を眺めていてこちらの会話には加わらず、もう一人はシンジュクゲットーでルルーシュと共に救出した毒ガスと呼ばれた少女だった。その後どうしていたか気になっていたのだが、ルルーシュの取り計らいで、彼女はルルーシュの部下になったのだそうだ。
初対面と言ってもいい人間を部下において、自分を拒絶したことにスザクは腹立たしさを感じたが、自分の部下とすることで彼女をクロヴィスから守っている可能性があるためそれ以上は口にしなかった。
少なくても、ルルーシュからナナリーを任されるほどの信頼を彼女は得ているのだ。
あのルルーシュから。
その彼女が口を開いた。

「枢木スザク。それはお前の望みなのか?」

淡々として紡がれた言葉に、感情は見られなかった。

「え?」
「ルルーシュの騎士になる。それはお前の望みなのかと聞いたんだ?」

聞かれた意味が解らないと、スザクは眉を寄せた。

「当たり前だろう?そうでなければ、こんなこと考えたりはしないよ」

さも当然に用にいうスザクに、C.C.はその年齢には不似合いなほど不敵な笑みを浮かべた。こういう所は何処かルルーシュに似ていて、スザクはますます苛立った。

「それはどうかな?ルルーシュが哀れに思えて、仕方ない、自分が守ってあげよう、自分しか守る人間はいないんだから。・・・なんて考えているだけじゃないのか?」

可哀そうなルルーシュは僕が守らなきゃ、って思ってないか?

「C.C.さん!」
「ちょっとC.C.さん、そのいい方ひどいよ!」

ミレイとシャーリーが怒りを乗せてC.C.を止めるが、彼女の口は止まらなかった。

「ルルーシュの周りには味方はいないから、ルルーシュが信用しているのは自分だけだから、自分がルルーシュを護らないといけない。皆もそう思っているから、ルルーシュの騎士にならなければならない。そんなおこがましい事を考えてはいないか?」
「違う。僕は」

嘲笑うような言葉に、スザクは眉間に深いしわを寄せた。

「ルルーシュを守りたいんだ、だろう?それはもう聞きあきたよ。別にそれを否定したわけじゃない。ただ、お前はなぜルルーシュの騎士と言う位置を望むかを聞いているだけさ。同情か?憐れみか?それとも友情か?少なくてもお前はルルーシュを自分の生涯の主にしたいと望んでいるようには見えない」

冷たく感情のこもらない声で語られた魔女の毒。
それは純白の思いにポツリと疑惑と言う名の黒い染みを作り出した。

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